
素材いろいろ、音色もいろいろ
日本人は昔から夏を涼しくするためにさまざまな工夫をしてきました。
打ち水、うちわ、すだれ、風鈴。なかでも風鈴は、音からも見た目からも涼を感じる「夏の風物詩」として多くの人に愛されてきました。
風鈴の音が心地よいのはなぜ?若者たちにとっては騒音に聞こえるというのは本当?日本の夏の音、風鈴のエトセトラを爽やかな風とともにお届けします。

「涼しい音」と聞いたとき、心地よく鳴り響く風鈴の音色をイメージした人も多いのではないでしょうか。
風鈴の音色には、α波(リラックスしている時の脳波)を誘発し、私たちを安らぎへと導いてくれるといわれる1/fのゆらぎ*があります。
さらに、小川のせせらぎや小鳥のさえずりなどと同じ高周波音が含まれており、これが脳内のストレスを抑制し、暑さによる不快やイライラをやわらげてくれる癒しの効果がある、といわれているのです。
また、倍音(周波数が倍倍で含まれ、ひとつの音の中にさまざまな音が入っている)も含まれていることがわかっています。この倍音にも聞いた人に心地よさを与える効果があるという説があります。
また、風鈴の涼しさは、音だけで感じているのではありません。見えない風を風鈴の音から体感し、涼を感じているともいえるのです。風鈴の音色が響くのは、風が吹き抜けた証拠。日本人は昔から、風を音に変えてその風情を楽しんできたのです。
*1/fのゆらぎ=人の生体リズムや自然界にあるといわれる、連続的でありながら一定ではない揺れのこと


現代の若者たちは、その音色をやかましいと感じることがあるそうです。いったいどうしてなのでしょう?
一説によるとこの傾向は、幼い頃から電子音が取り囲む環境の中で育ち、自然の中で過ごす体験が少ない人たちに多くみられるとのこと。小川のせせらぎや小鳥のさえずりも、その音から背景にある自然や澄んだ空気、晴れ晴れとした青空などを感じることがなければ、単なる音、として捉えるのかも知れません。

似た例で、風鈴や秋の虫の音など日本人には風流に聞こえる音でも、外国人にとっては雑音に聞こえるという話があります。
それでも日本で長く生活するうちに、風鈴の音色に風情を感じるようになったり、日本の夏だなと感じるようになったりするとか。実際、倍音や高周波が多く含まれたシンキングボウルやチベタンベル、クリスタルボウルなどは海外でも人気があります。
このように、音に対する感受性は個人差がありますが、親しんだ文化や育った環境の影響が大きいと言われています。子どものうちから自然の音に慣れ親しみ、心地よく響くような体験をさせてあげたいですね。

風鈴はいつごろからあるのでしょう? 風鈴の起源は中国で、風の向きや音の鳴り方で吉凶を占う道具でした。日本には仏教の伝来とともに日本に伝わり、厄除けとして使われていました。ガラス製の風鈴が出始めたのは1700年頃のこと。長崎のガラス職人が見せ物として大阪、京都、江戸を興行しながら伝わっていきました。当時ガラスは大変貴重なものだったので、現在の金額で200万〜300万円もしたそうです。その後およそ100年の時を経て、広く世の中に出るようになりました。


風鈴の音色は素材によって繊細な違いがあるのをご存知ですか?
また、海外にもさまざまな素材でつくられた風鈴があります。
音に対する感じ方は百人十色。あなたが心地よいな、と感じるのはどんな音色でしょうか?


江戸風鈴とも呼ばれ、もっとも有名な風鈴の一つ。内側に描かれたさまざまな絵柄を楽しめます。伝統的なのは金魚・朝顔などの夏らしい模様。見た目もひんやりと涼しげ。江戸風鈴は切り口の部分がギザギザになっており、そこに管があたると音が微妙に変化するのです。


約900年に及ぶ歴史がある、日本を代表する風鈴。
その音色は環境省が選定した「残したい日本の音百選」に選ばれています。
和の落ち着きを感じさせる重厚なデザイン。


太さ・長さにより、音階が異なるため、ひとつひとつ音色を聴き分けながら、すべて手作業で作られています。
マイナスイオンで空気清浄&リラックス効果も。


素朴でナチュラルな印象。
美濃、備前、信楽、瀬戸、有田など、日本有数の陶器の産地から風鈴が生まれています。
伝統工芸士の作る作品も人気。


金管楽器によく使われる素材。心とからだに染み入るような余韻の長さが特徴。細かい細工が可能で上品でモダンなデザインが多く、インテリア雑貨としても見直され、アーティスト作品も登場しています。


亜熱帯の自然を感じさせるエスニックな印象。
その音色に木琴やガムランをイメージする人もいるようです。壊れにくく頑丈なのも嬉しい。


南の島のお土産屋さんでよく見かけるタイプ。
風と波の音が混ざったような音色を奏でながら、風に揺られる貝殻を眺めているだけでも、爽やかな南国気分が満喫できそう。


海外のウインドウチャイム(又はドアチャイム)で数多く存在する。
涼しさを感じさせるというより、澄んで音色を楽しむグッズとして、年間を通じて利用されています。デザインも豊富。


風鈴の音色を楽しんでいる人にとっては少し残念かも知れませんが、最近では密集した住宅地や集合住宅での風鈴の音が、生活騒音だとして近隣問題になることもあるようです。生活リズムの多様化や現代の住宅事情を考えると、風鈴にも以下のようなルールを守った楽しみ方が求められています。

なにより季節や時間を問わない“鳴りっぱなし”が一番の迷惑になります。風鈴は吊るしっぱなしにするのではなく、音を楽しむものとして扱いましょう。ちなみに江戸時代の日本人も、眠りにつく前に屋内に風鈴をしまったといいます。
南部風鈴の音色は、環境省が選定した「残したい日本の音百選」に選ばれています。
このように風鈴は日本人の“風をも愛でる”感性を表す文化のひとつ。大切に受け継いでいくためにも、思いやりの気持ちを忘れずに音色を堪能しましょう。


「四季を通じて聴くことのできる癒しのサウンド」として、日本の風鈴の音の素晴らしさを、世界へ伝えるため、演奏活動を続ける世界で一人のプロの風鈴演奏家。神奈川県厚木市の七沢にある「癒やしの森」をモチーフにした楽曲を数多く発表。健康雑誌「壮快」では魔法の音として過去9回紹介されているほか、音楽療法の一環として日本各地の治療院で利用されている。TV出演:「首都圏ネットワーク」、「ズームイン!!SUPER」、「アド街ック天国」「ぶらり途中下車の旅」他。タワーレコード、新星堂等で風鈴CD発売中。
