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インタビュー 後編

女は死ぬまで“女”“女”を放棄しないで、“女”のハートをもって、かわいらしくキレイに生きようよ
池下レディースクリニック銀座院長 産婦人科医 池下 育子さ
詳細プロフィール
前編 後編
医者になりたてのころは、
患者さんと話すこと、目を合わせることが怖かった
同世代の女性たちと向かい合い、話をできれば
自分の人生もまた変わってくるかもしれない
何かあったときにすぐ相談できる
“かかりつけ医” になりたい
肌っていうのは、いちばん表面にある“内臓”だから、
症状がもっとも出やすい
「自分の身を守る」「自分のからだと向き合う」
そういう気持ちをもって、行動することが大事
ハートを「女」で持ち続ければ、しわがあろうが、
白髪が増えようが、恋もできるし、乙女でいれるはず
年をとってくると、
ひとつひとつが大事な時間、大切な出会い

肌っていうのは、いちばん表面にある“内臓”だから、症状がもっとも出やすい

よく「女性ホルモンのバランスが崩れると、心にもからだにも影響が出て」とか「ホルモンが減ってきたのか調子が悪い」などと聞きますが、実際どういった症状がみられるのでしょうか。
20代後半から30代、40代前半までの「分娩適齢期」っていわれている女性は、女性ホルモンがピークですから、「ホルモンが減ってきた」というのが、からだの自覚として出てくることはあまりないですね。自覚が出てくるとすれば40代半ばくらいから。
インタビュー[後編]産婦人科医 池下育子さん 疲れがとれにくくなったり、化粧品が合わなくなったり・・・やっぱり肌のトラブルです。肌っていうのは、いちばん表面にある“内臓”だから、症状がもっとも出やすいんですよ。
たとえば、血色が悪くなるとかシミがいっぱい出てくるとか、じんましんができるとか・・・。トラブルが(胃や腸などの)内臓におよぶ一歩前にそういった目に見える症状が出ますから。

もちろん、20代から35歳くらいまでの間にも、からだのターニングポイントってあると思うんですよ。「なんかちょっと足りない」とか「肌がちょっとつっぱってる気がする」といった、そういうレベルだと思うけれど。それが40代半ばになると、もう明らか。
ある日鏡を見て「あれ?」と思うと、寝ているときの枕のタオルの跡やシーツの柄がとれてないとか(笑)。

わたしはダイビングをするんですが、1本につき30〜40分、1日3、4本潜ると、マスクの痕がまるで“おサルさん”みたいに夜中まで残るんですよ。周りを見ていると、だいたい40代は半日、30代は5、6時間なんです。で、20代はというと、それが1、2時間。ダイビングにいくとよくわかるんです。「あー、わたしやっぱり50代って」(笑)
肌ってこんなに違うんだなあっていうのがよくわかって、おもしろいですよ。
たしかに、自分の体調不良も肌の調子でわかったりしますね。
ええ。でも、ホルモンの低下はあまり感じないと思います。ただ、ホルモンバランスの変化なら、多少なりとも感じることがあるんじゃないでしょうか。
PMS(月経前緊張症)といって、排卵から月経までの時期に、いらいらする、肌荒れが起こる、ニキビができる、異常に眠くなる、だるいといった症状が出ることがあるんですが、これは、この時期ホルモンのバランスが急激に変化することから起きるというのも一因なんです。
排卵して、卵子が精子と出会って受精すると受精卵になります。
この受精卵が子宮の内膜に着床すると、妊娠が成立するんですが、そうすると(手元の図を指しながら)このピンクと黄色のホルモンがぐぅーっと上がっていくんですね。上がると同時につわりがでてきて、気持ち悪いといった、要するにママになるサインが出るんです。
妊娠しないとこの図のように下がっていくんですが、そのときPMSの症状が出るんです。「ああ、ホルモンが大きく変わってるんだなあ」って自分でもわかると思いますよ。

「自分の身を守る」「自分のからだと向き合う」そういう気持ちをもって、行動することが大事

患者さんを診ていると、(出産経験のない)40代前半〜半ばくらいの人たちのなかには「やっぱり女として生まれたからには、母性、母なる性、妊婦っていう性を1度くらい経験したい。
でも結婚予定はないし、年齢的にはもう更年期に向かいつつあるし・・・」とすごく迷っている人が多いですね。
インタビュー[後編]産婦人科医 池下育子さん
産めるんだろうか、いくつまで産めるんだろう、大丈夫なんだろうかって。
更年期に向かっていることへのあせりもすごくあるから、それが心身のバランスを崩すきっかけになるんです。
そしてそんなとき、生理の量が減るとか生理の周期が短くなったとか、生理がまばらになった、希薄月経、頻発月経などの症状がでてくると、「ホルモンが減ってきたんだわ」って強く実感するんですよ。

20、30代でもストレスからホルモンのバランスが崩れ、からだに出てしまう方がいらっしゃいますよね。
そう、多いですね。たとえば、恋人はいるんだけど女性からはなかなか結婚話を切り出せないとか、子どもはほしいけど相手を人生の伴侶としてみることがどうしてもできないとか。
そういうことって、「なんかストレスある?」って聞かれたときにすぐ口に出して言える話じゃないから、自分でも(ストレスになっているのかどうか)わかりにくいんですよ。
「会社で異動があったとか引越しがあったとか、上司と合わないとか、なんかトラブルなかった?」って聞くと「んー、とくにないです」って答えるんだけど、カウンセリングをしていくと、やっぱり、ぼろぼろぼろぼろ出てくる。
そういう人は、自分にとって“今”が人生の転機なのに、どこでリセットしていいかわからない。
なにをリセットすれば自分が幸せになれるのかがわからないんです。
もちろん、幸せってそれだけのものじゃないんだけど。でも、そういうことで悩んでいる人が最近多い気がしますね。そしてそのストレスがひどくなると、生理が止まったり、生理不順になっちゃう。
それはすごくわかりやすいホルモンのバランスの乱れといえますね。

わたしの同僚でも30代半ばくらいで婦人科系にかかっている人が意外と多くて、子宮などの調子が悪くなったとかそういう話をけっこう聞きますね。
昔にくらべ初潮が早くなって排卵の回数が多くなった分、子宮や卵巣にけっこう負担をかけているから、トラブルも多いんです。
それでも、昔みたいに20代で出産をして30代で産み終えて、というのなら、その間に2回か3回は婦人科に行っているので、病気を早期発見できることが多い。
でも、これだけ晩婚化が進むと、最初に婦人科にかかる年齢も上がりますから、当然発見も遅れることになるわけです。
もちろん会社で子宮がん検診をやっているところも増えてはきているんだけど、それでもやっぱり受診率っていうのは低いと思うんですよ。ついつい忙しいからとか、そういう機会があったときに生理になっちゃったとか、そういうことで婦人科が遠のく・・・言い訳しながら遠のいてしまうっていうのかな。
インタビュー[後編]産婦人科医 池下育子さん
近くにレディースクリニックがあればまだいいけど、産婦人科しかないと未婚の女性は近所の目があって行きにくかったりもするし。
そういう意味では、「自分の身を守る」「自分のからだと向き合う」っていう気持ちをもって、病気を防ぐためにも、きちんと避妊するとか、きちんと検診をするとか、病気の知識をもつとか、そういうことをするのが大事だって思いますね。
インタビュー[後編]産婦人科医 池下育子さん わたしも、心配には思っても、病院に行くのにはなんとなく抵抗を感じてしまい足が遠のきがちです。
そういう方は多いですね。
カルテを見て「あら、3年ぶりですね」「え?去年来ましたよ」「いらしてないですよ。平成17年ですよ」「ウッソー!わたし、検診、そんなにやってないんですか?」なんて会話はよくありますから(笑)。

何事もなければいいけど、子宮内膜症なんかあったりすると3年間で相当進行しちゃいますから、やっぱり検診は大切ですね。
実際、かゆいとか不正出血があるとかすごく痛いとか、せっぱつまることがあれば病院へ行くけれど、それ以外は「気のせい」「市販の薬で」ですませて、そのまま「治っちゃったわ」で終わっちゃう人がほとんどなんです。
でも、それじゃいけないんですよね。
そうなんです。そういうときのためにも、“かかりつけ医”を作っておいてほしいって思いますね。うちのクリニックも、「風邪を引いた」「くしゃみがちょっと出た」というだけで、みなさんいらっしゃいますから。そういう感覚でどんどん使ってくれるといいよね、ってスタッフともいつも話してるんですよ。

ハートを「女」で持ち続ければ、しわがあろうが、白髪が増えようが、恋もできるし、乙女でいれるはず

わたしは人間の性には3つあって、それは「男」と「女」と「妊婦」っていう性だと考えているんです。
たとえば、PMSでイライラしたり、過食になったりするのは、つまり「妊婦」になるか「女性」に戻るかの瀬戸際のところにいるから
女性の場合、「妊婦」っていう性を選ぶとホルモンの分泌がぐーっと上がっていって、やがてつわりがでてくる。でもそこでホルモンの分泌が下がってくると、「女」に戻る。つまり女の人は、「妊婦」っていう性と「女」っていう2つの性をもっているんです。
男性はオギャーと生まれて死ぬまでずーっと「男」。
でも、女はオギャーと生まれて「女の子よ」っていわれて女性として育ち、閉経すると中性になるって、びっくりするほど多くの人が思っているんですよね。
そうじゃなくて、初潮がはじまって生殖期をむかえて月経周期があるときは、女性であると同時に“妊娠・出産して母になる性”を持ち合わせているんです。だから、閉経すると「女」に戻る。母になる性は失っても、「女」に戻るんです。

それなのに、なんでみんな“わたしはおばさん”って言って開き直るのかしら。「女」であるということは、ハートを「女」で持ち続ければ、しわがあろうが、白髪が増えようが、恋もできるし、乙女でいられるはず。 それなのに、“おばさん”と言って開き直らないでほしいって思うんですよ。
インタビュー[後編]産婦人科医 池下育子さん
たしかに「もうおばさんだから、女としては終わったわ」なんておっしゃる方がいらっしゃいますね。
そう。男の人がいうと「なにばかなこといってるの!」って怒るけど、女の人自身がそれを認めちゃってるじゃないですか。
それで、開き直って「ああ、ラクラク」なってやっていたらダメよ、って思うんです。女はもう死ぬまで女なんだから、女を放棄しないで。女のハートをもって、かわいらしくキレイに生きようよ、って

年をとってくると、ひとつひとつが大事な時間、大切な出会い

インタビュー[後編]産婦人科医 池下育子さん 2000年にダイビングをはじめたんです。ほんとにすごい年(47歳)になってから(笑)。
運動の心得もぜんぜんないし、不器用だし、なにやってもとろいし、どうかなって思ったんだけど、友人から「おもしろいわよ。泳げなくてもとれるわよ」っていわれて。はじめてみたら、そこからはまっちゃって、もう楽しくて楽しくて楽しくて。

ダイビングやりはじめてから、ものすごく自分が変わったんですよ。
たとえば、それまで旅行は高級ホテルでリッチな食事、格好もオシャレなパンプスにスーツ、だったのが、今はユニクロのシャツ・短パンにビーチサンダル。遠征に行けば、1泊2500円の民宿にみんなで雑魚寝だし。自分でもね、「こんなに変わるんだぁ」って驚いてます。

池下さんにとってダイビングという趣味は、ある意味、“切り替わる瞬間”なのかもしれませんね。
ホントにすごく楽しくて。でも、若いうちにやっていたらこんなに楽しいって気づかなかったのかもしれない・・・。
年をとってきたせいか、ひとつひとつが大事な時間、ひとつひとつが自分にとって大切な出会い、っていう気持ちでやっているんです。
今は、10年、20年経っても30kg以上のタンクを背負ってダイビングできるようになりたいと思って、筋トレもやっているし、泳ぎも習ってるんですよ。ちゃんと鍛えて多少下半身がどっしりしているほうが、倒れないし、転ばなくていいってだんだんわかってたんです。
やっぱり怪我したくないし(笑)。やっぱり70、80歳になっても元気で生きていきたいし、自立したダイバーにならないといけないと思っているから(笑)。
年をとっていくっていうことはすごくラクになっていくってことなんですよ。だって、海からあがるときもエントリーするときも、みんな手を貸してくれるし(笑)。でもね、それじゃだめだと思うんです。
それで、「全部自分でやるから」って言って、20代、30代の人たちと同じようにエントリーしていたら、最近はだれも気を遣ってくれなくなったんです。でも、そっちのほうがわたしとしては気がラク。だからそういう風にあと10年も20年もできるようにしていたいな、と。

そのためにはやっぱり、しっかり食べる。わたしは、なんでも食べるし、作るのも大好き。昔から料理は好きでしたが、今は「食べる」っていうのが、すごく“自分の人生の基本”になったんです。

努力の甲斐あってか、以前は鍛えてなかったから重いタンクを背負ったらフィンを履いて立っているのがやっとでしたけど、最近はシャキッと自分ひとりで立っていられるようになってきたんですよ。
インタビュー[後編]産婦人科医 池下育子さん
池下さんがキラキラされていらっしゃる理由がわかったような気がします。
やっぱり、こうやって「楽しいことをイマジネーションできる自分」って、すごくいいじゃないですか。趣味をもちたいっていうところからはじまって、自分の・・・なんていうんだろう、ブランチ(枝)が広がっていったっていうのかな。だからいま、すごく幸せです。
前編はこちらから
読者からのQUESTION
「池下さんが、そんなに若々しく元気でいられるのは、なぜなのでしょうか?」
以前、患者さんから「先生、どうやっていつもそんなに元気にしてるんですか?」って聞かれたことがあるんですが、そのとき実は全然元気じゃなかったんです。40代前半のころだったんですけど、いろいろあってうつ病っぽかったうえ、どうしたら患者さんから話を聞いてそれを受け止めてあげられるんだろうって迷いもあって・・・。

それでどうしていたかというと、お休みの時に海辺に行ったり、山へ木の音を聞きに行ったりして、自然から“気”をもらっていたんです。深呼吸して“気”をからだのなかにいっぱい入れ、帰ってきたら、ためこんだ“気”を1個ずつ患者さんにプレゼントして・・・そうすると患者さんは「あ〜、ラクになりました」って言ってくれるんだけど、その代わりに自分はひとりでいるともうしんどくて。
鏡に映る能面のような顔の自分がまたすごくせつなくて、つらくて。そんなときダイビングの話を聞いて、「もしかしたら、海の中にも“気”がいっぱいあるかもしれない」って思ったんです。
同じころ自分の離婚問題が解決したっていうのもあります。
それで、自分が自由になれたっていうのかな。それまで、○○さんの奥さん、××ちゃんのお母さんっていう隠れミノで生きてきた。 それが離婚して、“池下育子”っていう名前で自立して、ひとりでしっかり生きていかなければならなくなったとき、なんだか自分が開放されたというか、足かせ手かせがなくなったような感じだったんです。
それまで、「趣味は?」って聞かれたら「仕事です」って答えるしかないくらい働いてきたけれど、でも、そのまま死んじゃって“仕事に生きて仕事に抱かれて死にました”っていわれるのはちょっと悲しいじゃないですか。たしかに仕事は好きだけど、「仕事はあなたを癒してくれますか?」って・・・。
だからなにか趣味をもとう、と。

それでダイビングをはじめてみたら、「“気”がいっぱい」じゃなくて「“気”のなかにわたしが入りこんでいってまぜてもらってる」って感じだったんです。続けるうちにそれまで飲んでいた抗うつ剤もやめられたし、夢もいっぱい広がっていって・・・。
そこでわたし、幸せをいっぱいもらったって感じなんですよ。
それと今のわたし、愛に囲まれた生活をしてるんです。といっても男の人の愛じゃないですよ(笑)。
レバちゃん、ニラちゃん、お姫ちゃんっていう3匹のワンちゃんたち。もう、むちゃくちゃかわいいんです。「愛ある生活。愛あふれる生活」ってみんなに言ってるくらい。その愛に満たされちゃってるから、もうほんとに楽しい。毎日笑って暮らしてるって感じです。
池下育子さんプロフィール

1953年青森県生まれ。帝京大学医学部卒業後、帝京大学麻酔学教室助手として勤務。国立小児病院麻酔科を経て東京都立築地産院産婦人科へ。1991年、同産院医長に就任。その後、1992年池下レディースクリニック銀座を開業。
当初、更年期に悩む女性が美容院に行くような華やいだ気持ちで来院できるように、という思いから銀座という場所を選んだのだが、今は8割が若い働く女性。会社や人間関係などのストレスで悩む女性たちの相談に本音でアドバイス。女性、心身のトラブル全般について積極的に取り組んでいる。1998年、スキン・クリニック・エミュをプロデュース。2001年、同クリニックを銀座に移転、ギンザ・エミュ・クリニックと改名。1999年、弟であり小児科医の宮野孝一氏と医療法人社団結草会を設立。
著書に『女性の病気百科 気になる体の悩みや症状がわかる』(主婦の友社)、『ラブ&セーフティ・セックス 愛するふたり』(日東書院)、『Maternity book ママになるまでの10ヵ月ダイアリー』(梧桐書院)など

※平成24年10月1日現在の情報です。

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