
名刺の肩書きは、なんと「ゴミ漫画家」!人気漫画家として多忙に過ごす一方、趣味からはじめたというエコロジー生活に積極的に取り組み、今では環境問題の講演会などでもひっぱりだこという赤星たみこさん。
“簡単家事生活”や“夫のしつけ”などに関する著書でも知られ、いったいどんなスーパーウーマン?とお宅に伺ったところ、現れたのは着物姿がとてもお似合いの、小柄でたおやかな女性でした。
ところがインタビューがはじまるとその印象は一変!力強く、かつ理論的に語られるご様子に、いつの間にかその場にいたスタッフ全員がすっかりお話に夢中。
エコのお話はもちろん、夫を家事好きに変身させるテクニック、子宮ガンや更年期障害を乗り越えた経験談まで・・・。女性として、人として、心に留めておきたいお話の数々を今回は全3回にわたりお届けします。どうぞお楽しみに!


Q1 人生のモットーはなんですか?
「なるべく」「なんでも」で生きる
Q2 今、1週間自由な時間があったら何をしますか?
どこか海外旅行でも行くか・・・でも1週間ではちょっと短いので海外より近所に温泉旅行かな。それか・・・、だらだら寝る(笑)。
Q1 ご自身とっての『♪』な瞬間〜自分にとって幸せ・うれしい・充実感を感じる瞬間〜を教えてください
やっぱり仕事が終わった瞬間。その時はすごく充実感がありますね。達成感というか。


─ 赤星さんというと、マンガの印象が強いのですが、今ではすっかりエコロジストとして有名になられましたね。
そうなんですよ。20年以上ずっとマンガを描いていて、それが急にエコな女性として出てきたので、中には同姓同名の別人と思っていらっしゃる方も多いみたいですね。
─ 勝手なイメージなんですが、マンガ家というと忙しく時間が不規則で、特に〆切前にはゴミだなんだなんてとてもかまっていられない、といったイメージがあるんです・・・。
そうなんです。だからこそ、ゴミを減らそうと。
ほら、ゴミが増えると片付けなくちゃいけないじゃないですか。だったら減らしたほうがいいじゃないか、と。そうすれば朝のゴミ出しに起きなくてすむ、って(笑)。
それがエコに興味を持ちはじめたきっかけですね。
エコって100%正しいことをしている人でないと語っちゃいけないような雰囲気がありましたよね。たとえば、インターネットで情報収集したりするのも電気を使うしよくない、とか「エコに関心はあるけれど、タバコを吸っているからダメだよね」とか。
でも、たとえタバコを吸っていてもゴミを減らすことはできますよね?だから、すべてのことに正しくないと語っちゃいけない、みたいな雰囲気がすごくいやで。
くだらないマンガを描いていたってゴミは減らせるよ、って(笑)。
100点満点のエコじゃなくていいじゃないって思うんです。
100%を求めたら、本当に細かいことまでいうと人間は死ぬしかないって思うんですよ。でも、そうはいかない。
地球にやさしい、地球を守るっていうのは、地球という惑星自身を守るというより、その上に生きている生き物、人間も含めた生き物を守ることだと思うんです。みんなができるだけ長く生き続けていけるように、全地球的にいっしょに心地いい生活をして生き続けていく。それが結局地球を守るっていうことなんじゃないかしら。
じゃあ、心地いい生活ってどういう生活だろう、といったらこれは人それぞれですよね。どの人のどの生活が一番いいなんて決められない。
ただ、何百種類もある“生活”の中で、何でもかんでも買ってきてポイポイ捨てていくような生活は、わたしいは正しいと思わない。そういう悪い生活をできるだけ少なくすることしかないかなあと思うんですね。
─ エコというと、正しい生活をしようとするもののようなイメージがあってそれは自分にとってハードルが高かったのですが、悪い生活をしないようにしようというのなら自分でもすぐできそうな気がします。
そうそう。「悪いことをあんまりしない」。
それも絶対やるな、じゃないんです。私の場合、必ず頭に「なるべく」とか「できれば」という言葉をつけちゃう(笑)。なるべくやらないようにしよう、って。
たとえば毎日インターネットで情報収集するのも、わたしは決して悪いことじゃないと思います。でも、10数時間も使うのはばかげている。
やっぱり1日何時間って決める、というように必要最小限にするような心づかいをすればいいと思っているんです。



─ 赤星さんのエコといえば、やはり石けんのことが頭に浮かぶのですが、石けん生活のきっかけはなんだったんでしょうか。
わたしが子供のころは、石けんしかなかったんですよ。合成洗剤が出回りはじめたのは昭和30年ごろ。
中学生くらいのころに合成洗剤のシャンプーが出てきて、それを使い出してから、頭がかゆくてかゆくて。でも当時は思春期でニキビもひどかったし、かゆいのも皮脂の分泌が多くなったからで、シャンプーのせいだとは思わなかったんです。
ところが毎日洗ってもかゆい。夜洗って、翌日の昼にはもうかゆいんです。かきむしって眠れないくらい。それが12歳くらいから22,3歳くらいまで続いたんですね。
ある日ふと「石けんのほうが手を洗っていてもスキッと洗えるし、そういえば子供のころは石けんで頭を洗っていたなあ」と思って試してみたんです。そうしたら、かゆみがとまって・・・。
わあ、すごい!って思いました。
それが一番のきっかけです。
ただ、かゆくはなくなったけれど、石けんで洗うと髪の毛はごわごわになるし、べたべたするし、ブラッシングするとなんだか白いものがついてくる。だから、「石けんは頭皮にはいいけれど、髪の毛には悪い」って思いこんじゃったんです。それで、ふだんは石けんで洗うけれど、翌日人に会ったり取材があるときだけ市販の合成洗剤シャンプーを使う、そんな生活をずっと続けていました。
そのうち、だんだんと石けんで洗ってもさらさらになるように工夫して・・・。
いつごろからかな。20代、いや30代前半ころ、泡を盛大に立てればさらさらになるっていうことに気づいたんです。


石けんで洗うとごわごわするっていうのは、たぶん合成洗剤のシャンプーと使うときと同じ程度の泡しか立ててないから。
合成洗剤は本当に少量で泡立つんですが、石けんは同じ程度の泡立てだと泡がゆるくてすぐ消えてしまう。だから、みなさん泡立ちが悪くて使いにくいっておっしゃるけれど、それは皮脂などの汚れに(泡の量が)まだ負けてるってこと。少ない泡で洗うと、石けんカスや皮脂、脂分がまだ残留しているから、ベトベトネトネトするんですよ。
もっと石けんを足して、アフロヘアに見えるくらいの大きさになるまで泡立てて、そのもっちり固い泡を使って洗うと、汚れもすっきり落ちるんです。
─ なるほど。たしかに滑らかな泡をたっぷり立てて顔を洗うと、すごくスッキリして気持ちいいですよね。
そうそう。
泡立て用のネットやスポンジを使って、野球ボールくらいの大きさになるまで泡立てて、その泡のクッションで皮膚が動かないようにやさし〜く洗う。そうすると、洗い終わったときの感覚も全然違います。
すすいだときにすぐスキッとするでしょ?合成洗剤の洗顔料だと、たとえば指の間あたりが、いつまでもぬるぬるしていたりするんですよ。
これは、合成洗剤の特徴の一つに、薄めても薄めても界面活性作用を失わないという特徴があるからなんです。この界面活性作用っていうのは、水と油のように異質なものの境界線に働いてそれらを混じり合わせてしまうこと。モノに浸み込む力といってもいいかもしれません。

ある一定の濃度以下になるとその力は失われるのですが、その濃度をミセル臨界濃度といいます。石けんはこのミセル臨界濃度がやや高い。だから、水で薄まるとすぐに臨界濃度以下になってすぐ浸み込む力を失うんですね。ところが、合成洗剤っていうのは、ミセル臨界濃度が低い。だから泡もすぐ立つし、薄めても泡が消えないんです。

つまり石けんと合成洗剤で同じくらい立てた泡で洗った場合、石けんならちょっとすすぐとすぐなくなるけれど、合成洗剤は薄めても薄めてもまだ浸み込む力が続く。合成洗剤のほうがすすいでちゃんと落とすのにたくさんの水が必要なんです。
たとえばシャンプーやリンスの香り。あれって香りがずっと残って落ちないですよね。それがいいことだとみなさん思っているんだけど、あれは香料成分がずーっと残っている、残留しているってことなの。それを落とすのはものすごく大変なわけ。
─ そうやって化学的に説明されると、とても説得力がありますね。
今は髪の毛のことですけれど、掃除をしたりとか、汚れを落とすってことはやっぱり化学なんですよね。
わたしは、化学や物理が大嫌いで、まったく理系人間でないんですけど、実際に目の前で起きていることをみながら、あとで理屈をつけるとよーくわかるんですよ。


─ 赤星さんというと、「とろとろ石けん」が有名ですが。
29歳のときに結婚して、生協に入ったんです。
その説明会で、石けんで換気扇を洗う実演をしていたのね。それが粉石けんをたらいに入れて、お湯で溶かし、そこに換気扇をつけこむという方法だったんですが、しばらく浸け置いて説明が終わるころに出してみたら、浸けていたところがピッカピカなの!「うわっ、すごいなあ」って。
でも、浸け置きだとせっかく作った液体を流してしまう。それはもったいないなあと思って、石けんを溶かしてとろとろにしたものをそのままスポンジにつけて洗ったらどうだろう、と。それが「とろとろ石けん」のはじまりだったわけ。
でも、これって昔の知恵なの。昔の人はみんな、石けんっていったらそうやって使っていたそうですよ。ただ、ネーミングはよかったかも。
─ たしかに石けんというと固形のイメージが強いので、なんだか使いにくそうですが、とろとろ石けんといわれると使いやすそうに感じます。
見た目がとろとろしてるから、とろとろ石けんってつけただけなんだけど・・・まさにネーミングの勝利ですね(笑)。
─ 現在は、洗濯も掃除も洗顔もすべて石けん、という生活をなさっているそうですが。
だって、ちょっと使いかたに気をつけるだけで、ものすごく汚れが落ちますから。
うちは2人とも片付けが大嫌いなはずなんですけれど(笑)、掃除や洗濯、換気扇を洗うといった汚れを落とす仕事はものすごくカタルシス※になっていて、夫婦で奪い合いですもん(笑)。
※カタルシス・・・心の中に溜まっていた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されること


─ エコ家事というと、なんだか手間がかかるものというイメージが大きかったのですが、そうやって何にでも共通して使え、しかもスッキリキレイに落ちるなんて、エコであると同時に「簡単家事」にもつながりますね。
エコって決して手間がかからないんですよ。わたしみたいに手間が掛かることは大嫌いな人が続けられているんですから(笑)。
今、重曹がとても流行していますよね。重曹ってたしかに汚れが落ちるんですけれど、けっこう手間と時間がかかるんです。ただ、重曹の本ってとってもスタイリッシュに作られているんですよね。だから、みなさん重曹で手間をかけて落とすのがいいと思っちゃうんじゃないかしら。それより石けんだったら10秒で落ちるのに(笑)。
だから、エコって手間が掛かるって思い込みはやめてほしいんですよね。同じように、環境にいいものは効果も穏やかに違いないという思い込みもやめてほしいんです。
よくみなさん、合成洗剤と同じような使い方をして、「石けんは合成洗剤に比べて汚れ落ちが悪いよね。でも環境にいいからがまんして使わなくちゃ」という。それでしばらくして、やっぱりだめだってやめちゃう。そういう人が多いんです。
でもね、石けんは、しっかりたっぷり泡立てて使えば、本当に汚れ落ちがいいんですよ。



材料
粉石けん
お湯
スプーン
コップ1杯
1リットル
1本
作り方
1. 粉石けんコップ1杯くらいと、お湯1リットルくらいを用意します。(適当で大丈夫! )
2. 「1」の2つを合わせてスプーンなどで混ぜ合わせます。
3. 湯が冷めてとろとろになったらできあがり。
とろとろにならなくて、クリーム状やスライム状、シャバシャバ状態になっても大丈夫です。


1957年宮崎県生まれ。
79年講談社「mimi」でマンガ家デビュー。軽妙な作風で人気を博し、現在は、青年誌、総合誌を問わず、あらゆるタイプのマンガで男女を問わず幅広い層に支持されている。1997年、子宮ガンのため、子宮と卵巣の摘出手術を受ける。その体験を綴ったエッセイに「はいッ!ガンの赤星です!!」(扶桑社)がある。
また、趣味から始まったエコロジーと健康への興味が高じ、無理せず誰にも続けられるエコな健康生活術を提唱。今では各地での講演も大好評。著書に「ダメ犬ちゃん夫のしつけ 37のルール」(すばる舎)「きれいに暮らす簡単石けん生活」(青春出版社)「赤星生活」(講談社)「夫婦二人三脚で更年期越え」(講談社α新書)ほか多数。
公式ブログ「赤星コム」http://www.akaboshi.com/
※平成24年10月1日現在の情報です。
注※) 本記事に掲載されているイラスト画像は、「ダメ犬ちゃん夫のしつけ 37のルール」(すばる舎)より、赤星たみこ様および株式会社すばる舎様の許諾を得て使用しております。















