医療機関と連携し、傷跡ややけど痕などのカバーやそれにともなう精神のケアをおこなう「リハビリメイク」の第一人者である、かづきれいこさん。リハビリメイクを通じて、多くの方が抱える「顔」の悩みにメンタルな面からも取り組むフェイシャルセラピストでもあります。
活動のきっかけは自身の体験から。生まれつき心臓に穴が開いていたために (ASD:心房中隔欠損症)、冬になると顔が真っ赤になってしまう症状に悩んでいましたが、30歳の時に手術し完治。顔の赤みが解消されたのを機に、「外観に悩みを持つ方たちの力になりたい!」と美容学校へ入学します。ところが教えてくれるのは流行りのメイクばかり。
そこで独自に、顔の傷やあざ、やけど跡などをカバーする技術を研究。そして誕生したのが「リハビリメイク」です。
その他にも“10年前の顔になる”と評判の「かづきメイク」のレッスン、オリジナル化粧品の販売の他、NPO法人フェイシャルセラピスト協会を立ち上げ、老人ホーム等へのメイクボランティアにも力を注いでいらっしゃいます。2011年には宮城県仙台市、若林区の避難所を訪問。メイクの持つ「人を元気にする力」を実感したのだそうです。
さらには学会発表、大学での講義、講演やメディア出演など、多岐にわたる活動をパワフルに続けるかづきさん。その根底にある「皆様の笑顔が見たい」「自分の顔を好きになるお手伝いがしたい」という強い思いはどこからくるのでしょうか。
メイクに対する思い、自分に与えられた使命、かづきさんの考える美しさなどについて、熱く語っていただきました。


リハビリメイクを始めたきっかけは、私自身が生まれつき心臓に穴が開いていたため、冬になり寒くなると顔が赤くなってしまう症状に悩んでいたという経験からです。それがなければメイクを研究することもなく、悩みを抱える方の気持ちもわからなかったと思います。
私の場合は、皆と同じ普通の白い顔になりたかった。でも当時はその方法がなかったので、自分で研究したのです。
リハビリメイク後に患者さんから「本当にありがとうございました、助かりました」、「生きていて良かったです」などとおっしゃっていただけると、逆に私の過去のトラウマも消えるような気がします。
幼少期は自分の病気のことがわからず、ただ身体の弱い子どもで、「お母さん何で私だけ運動ができなくって、顔が赤いの?!」と劣等感のかたまりのようでしたが、その頃の辛く悩んだ経験があったから、リハビリメイクが生まれて、こうして心から喜んでくださる方がいる。ああ私、この世に生まれて来て良かったと思うのです。

実は子どもの頃から寿命は30歳までだと周りには言われていて、それを漠然と感じていました。それが30歳の時に心臓の手術で完治し、今まで生かさせていただけたのです。
生かされている、という感謝の気持ちが原動力となり、今こうして続けているのだと思います。私にとってリハビリメイクは“やらせていただいている”という感じ、使命感のようなものがあります。
リハビリメイクに携わっているスタッフにも「あなた達も使命があってここにいるのよ」といつも話しています。



小学生の女の子がお母さんに連れられてリハビリメイクを受けにいらした時のことですが、声をかけてもうつむいて口数も少なくて。そんなおとなしい彼女が、メイク後に鏡を見て「キレイ!」とニッコリ笑ってくれた時、涙が出そうになりました。その顔がどんなにキレイだったか。その笑顔がどれだけ素晴らしいか。
そして「先生、私、大きくなったら人の役に立ちたい」って言ってくれたのです。それを聞いて、心からこの仕事を続けてきて良かった!その言葉だけで私はこれから10年頑張れる…そういうことをいつも感じています。
通常リハビリメイクは、まずメイクをして「キレイになった!」と心から喜び笑顔になっていただくところから始まります。その後、ご自分で出来るようにリハビリメイクの方法を覚えていただくのです。
技術を習得すると、数ヶ月後にはほとんどメイクをしなくても生活が出来るようになる方も多くいらっしゃいます。「先生、なんだか気にならなくなりました」とおっしゃるのです。
必要な時はいつでもメイクで隠すことができる、その安心感がこの言葉につながっていくのかもしれません。気にならないというのは、受け入れられたのです。
たとえ顔にあざや傷があったとしても、それはご自分のせいではありません。
悩みのある方は「大丈夫ですよ」という言葉は求めていません。まずご本人の長所をいかしお化粧で完璧に隠します。すると鏡を見た瞬間に、その方の表情が変わります。
そこからカウンセリングを始めていくケースもあります。悩みをお母さんにぶつけていた方は「恨んでなんかいないけれど、お母さんにしか言えなかった」とポロポロっと涙を流しながら本当の気持ちを口にしてくださったこともあります。
気にならなくなっていく根底にあるのは、患部も含めご自身であることを認められるお気持ちの変化なのかもしれません。
そしてそれが、自分の顔を好きになる第一歩ではないでしょうか。
リハビリメイクは手段であって目的ではありません。患部を受け入れ社会復帰を目指していただくこと。メイクがそのきっかけになれれば、こんなに嬉しいことはありません。


一般の方のアンチエイジングとして、10歳若返る「かづきメイク」も皆様にご好評をいただいておりますが、15年以上前から私が提唱している血流マッサージやリハビリメイクの効果などについて医学的に裏づけを取り、データをまとめて発表し、注目していただく機会が増えてきました。まるで導かれているように一歩一歩ここまでこれました。

また教育の場も多く、時代なのでしょうか。
以前、突然「10代の女性にメイクをしてみたい」と思いたち、10人くらいと雑談をしながら3〜4時間話をしたことがありました。
それから半年も経たないうちに、早稲田大学から客員教授のご依頼があり、あの時の経験から迷わずお引受けし、あれからもう5年ほど経ちます。
他にも、論文執筆や学会発表、大学病院などでリハビリメイク外来の場所も増えてきました。
病院の外来などでは、眼科、脳外科、精神科、形成外科、皮膚科、透析科など、さまざまな科から患者さんをご紹介いただいています。
たとえば形成外科では、カンファレンスに参加しメイクした写真を見ていただき、以後の手術での最優先の箇所などを一緒 に検討させていただいています。医学書や論文誌などにはリハビリメイクや血流マッサージを検証したデータが掲載されて いますし、医療現場でますます必要とされているという実感があります。
先日、形成外科の先生がおっしゃっていたのですが、傷を直接治そうとせずに、脳から「治せ、治せ」と指令を送る方法が研究されているそうで、実際に傷が治っていく例もあるのだとか。今後、重要視されるようになるのではないでしょうか。
いつか、寝ている間に「肌がキレイになれ、キレイになれ」と脳に指令を送るだけで美肌になれる時代がやってくるかもしれませんね(笑)。
現在、研究ではメイク前とメイク後に、確かに脳が変化することがわかってきています。メイクした顔をパッと見て「キレイ」と感じるわけですから、瞬間的に脳の変化が数値となって表れるのです。


外観的に悩みを抱えている方のつらさのひとつに、その苦しさをまわりの方に理解してもらうのが難しいという事がありますが、その苦しさを表すエビデンス(根拠)があれば何かが変わっていくのではないかと思います。
これからメイクは単なる「オシャレ」ではなく予防医学になる可能性を秘めているのです。
昔は人生50年でしたけれど、今はその倍近くを生きられるようになりました。
近年では寿命が延びたことで、50歳を超えてからの元気な生き方がわからないとおっしゃる方もいらっしゃいます。メイクはいつまでも元気に輝くことをサポートする方法のひとつ。そのことを皆様にお伝えしていくことも私の大きなやりがいとなっています。


1952年、大阪生まれ。
フェイシャルセラピスト・歯学博士・REIKO KAZKI主宰。
新潟大学歯学部臨床教授、早稲田大学感性領域総合研究所研究員客員教授ほか、10大学で非常勤講師を務める。
社団法人リハビリメイク.協会、NPO法人フェイシャルセラピスト協会理事長。
メイクを通じて、女性の心理を追究している。
また、傷跡やヤケド跡などのカバーや、それにともなう心のケアを行う「リハビリメイク」の第一人者として、医療機関と連携した活動も行っている。
幅広い年代の方を対象に、元気に生きるためのメイクレッスンを開催するほか、テレビや雑誌、講演会などでも広く活躍中。
REIKO KAZKI公式ホームページ http://www.kazki.co.jp/
※平成24年10月1日現在の情報です。















