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![インタビュー[前編]パティシエ 柿沢安耶さん](images/img1.jpg) |
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最初から“野菜スイーツ”のパティシエをしようと思っていらしたんですか?
昔から“フランスに住みたい、将来はケーキショップかレストランをやりたい”って思っていたんです。
それで大学でフランス語を勉強しながら、料理研究家の方のところに通ったり、独学で料理の勉強をしていたんですね。フランス留学もしたんですが、そのとき「なにか違う」と感じて・・・。
フランス料理やフランス菓子は、味はもちろん、見た目の美しさやきらびやかさ、高級食材を使うといった方向にいきがちで、“健康”という観点は二の次という考えが一般的になっています。そこがいかにも男性的な気がして、男女の“差”をすごく感じたんです。
やはり料理の世界は男性が多い社会ですから。でも女性って食事の仕方もそうですけれど、ダイエットを気にしていたり、栄養のバランスをとらなくちゃとか、まずからだのことをいろいろ考えるじゃないですか。
それで私が女性としてできることはなんだろうって考えたときに、もっと家庭的な温かい料理で、食べた人が健康になれる、元気になれる料理をつくれたらいいなって思ったんです。 |
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それから、じゃあ自分になにができるのかなと考えていたときに出会ったのが、ベジタリアンやマクロビオティックの食事法でした。 もともと肉や魚を食べるのが苦手で、「レストランはやりたいけれど肉をさばくような仕事は少しつらいな」と思っていたこと、フランス留学を経験して「私には高級できらびやかな世界はちょっと向いていないな」と思っていたこともあり、マクロビオティックに出会ってすぐに「これだ!」って思ったんです。 からだがヘルシーで元気になるっていうことも含めて、ここには私が求めるすべてが揃っているって。 |
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ご自身がべジタリアンでいらっしゃるとききましたが。
ええ。まず自分自身が実験がてらベジタリアンになり、マクロビオティックを実践することでからだがどう変化していくのか確認しようと思ったんです。
でも、実際やってみてその制限の多さが気になって。
マクロビオティックは肉・魚はもちろん、乳製品も卵もお砂糖もとらないという食事法なので、ケーキも食べられないですし、外食もなかなかできません。
そのせいで周囲とのお付き合いが難しくなったり、パートナーが食べてくれないといったことがあって、それでやめてしまう人がすごく多いんです。
実際私も、ふだんからおにぎりを持ち歩いたり、ほかの人とは違う食生活になってしまい、これを続けていくのは難しいなと思いました。 |
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![インタビュー[前編]パティシエ 柿沢安耶さん](images/img2.jpg) |
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マクロビオティックの考え自体は、とてもすばらしいんです。
たとえばオーガニック野菜を食べたり、昔ながらのちゃんとした調味料を使うということ、その土地のものを食べるのがからだによいという「身土不二(しんどふじ)」※という考え方がそうです。
日本人は日本に生まれ育っているのだから、外国産ではなく、日本の土で出来たものを旬の時季に食べるのが体質に合っているし、それがからだのバランスを調え、元気にしていく、ということですね。 |
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それで自分なりのマクロビオティックというか、ベジタリアンの食事法をいろいろ考えたんです。
少し制限をゆるくして、もっと続けやすいベジタリアンでもいいんじゃないかな、と。
だから今は、乳製品や卵は食べているんですよ。
※身土不二
「身」(今までの行為の結果=正報)と、「土」(身がよりどころにしている環境=依報)は切り離せない、という意味の仏教用語。転じて、「からだと環境(土地)は切り離せないものであり、自分が生まれ育った地域=地元で栽培、収穫された食べ物をその時季(旬)に食べることが、からだにとってもっとも良い」という考え方。 |
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最初にオーガニック野菜のレストランをオープンしていらっしゃいますね。
26歳のときに、栃木で「オーガニックベジカフェ・イヌイ」というベジタリアンのお店をはじめました。
主人の実家が栃木だったこともあるのですが、野菜料理のお店ということで採れたての野菜を使いたかったというのが栃木を選んだ理由です。栃木は有機栽培農家が多かったので。 |
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店をはじめるにあたり、準備のためにたくさんの農家を回ったんですが、実はそのときはじめて“有機農業”に直面したんです。
それまでずっと東京にいたので農業をしている姿はあまり見たことがなく、オーガニック野菜がからだにいいということぐらいしかわかっていなかったので、ある意味ショックを受けたんですね。
「ああ、こうやって野菜って出来ているんだ」って。
そのとき、改めて自分も含む今の日本人・・・日本人だけではないかもしれませんが・・・は、肉にしても魚にしても野菜にしても、できるまでの過程やつくっている姿をあまり見ていないんじゃないか、その部分が抜け落ちてしまっているんじゃないか、と強く思ったんです。
海に切り身の魚が泳いでいると思っている子どももいるって言いますよね。
そうなんです!お刺身の姿しか知らなくて、魚には骨がないと思っている子どももいるとか。
なんだか、そういった(食卓に上がるまでの過程を教える)教育が抜けていることが、食べ残しをしてしまったり、モノや命を大切にできない子どもたちを増やしているような気がします。 |
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![インタビュー[前編]パティシエ 柿沢安耶さん](images/img4.jpg) |
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私自身農業の現場をみてようやく、それまで注文すれば当たり前のように届くと思っていた野菜が、じつはそうじゃないんだということを実感したくらいですから。
だから、生産者の方々にもっとスポットがあたるようにしたいですね。農家の方々をはじめとする生産者の方々がいてこそ私たちはご飯を食べられるということ、多くの手がかかっているものだからこそ大切にしないといけないということをもっと世の中に知ってもらいたいです。 |
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じつはわたし、大学卒業後にケーキ屋さんに勤めたことがあるんですが、半年で辞めているんです。
それは、見た目を美しくするために着色料や光沢材を使ったり、たとえば「チョコレートならヴァローナ(フランスの老舗高級チョコレートメーカー)」というようにブランドにはこだわるのに、食の安全性はあまり重視していないということにちょっと疑問を感じてしまったから。
砂糖をすごくたくさん使うこともあり、ケーキって楽しいときに食べるものなのにすごくからだに負担になるものをつくっているという気持ちになって、それで一度ケーキの世界から離れたんです。
でもケーキのことはずっと頭に残っていて、栃木でオーガニック野菜のレストランをはじめたときに改めて、からだにいいとまではいかなくても「負担にならないケーキをつくりたい」って思ったんです。
粉や卵などひとつひとつの食材はもちろん、砂糖や脂肪分をできるだけ減らして、いろいろなことにこだわったケーキ。
そのとき「野菜を使えば色もきれいに出せるし、栄養も確実にあるケーキができる」と思いつき、今のような野菜ケーキにたどりつきました。 |
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トマトのショートケーキやごぼうのガトーショコラなど、斬新な組み合わせですよね。アイデアはいったいどうやって生まれるのでしょうか?
料理の勉強をしてきたこと、ベジタリアンということで野菜の扱いには慣れていたことが役立っています。味や色など野菜の個性を考えながら、ほかの食材との相性を考えてケーキにしていくんですが、ひとくちに野菜といっても、サツマイモやカボチャのようにスイーツにしやすいものから、難しいものまでさまざま。
食べにくいものは、チーズやチョコレート、果物など、いかにもケーキらしい食材とあわせて食べやすくするなど、いろいろ工夫しています。本当に試行錯誤のくりかえしですね。 |
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ケーキになっていることで、野菜嫌いなお子さんにも食べてもらえそうですね。
そうですね。
そういう意味では、野菜ケーキを「ここに来ないと食べられない」ものではなく、ご自宅でもぜひつくっていただきたいと思っているんです。
たとえば、「ニンジンがちょっとあまっちゃったわ」といったときも、それをただ味噌汁に入れるのではなくケーキに変えることができたら、子どもたちから「おかあさん、すごーい!」ってなるじゃないですか。
そうやって、いろいろ工夫して食べやすい形にすることで、子どもたちが野菜嫌いを克服できるきっかけになったらいいなって思うんです。
最近は野菜不足といわれているので、スイーツとして食後にも野菜が摂れたらからだにもいいと思いますし。 |
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![インタビュー[前編]パティシエ 柿沢安耶さん](images/img6.jpg) |
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野菜って不思議ですよね。ちょっと手を加えたり、塩を入れるだけですごく甘くなったりして。
きちんとつくられた野菜は蒸すだけでも軽く炒めるだけでもおいしいですから、料理をむずかしく考えずにどんどんチャレンジしてほしいです。お鍋とフライパンさえあれば、野菜料理だったら何でもできちゃいますから。 |
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