テレビ通販は、わずか7分の時間枠の中で、「いいな」という興味喚起から「買おう」という電話をかけるアクションまで視聴者を導かねばならない。特に健康関連の商品については、テレビにおける様々な規制(言って良いこと、悪いこと)もあり、言葉だけで商品の良さを伝えるのは難しい。商品の良さは映像で見せる必要がある。そのためにモニターと呼ばれる体験者に実際に商品を使ってもらった上で、その“事実”をもとにテレビの特性を活かしたインパクトのある見せ方、売り方で勝負を賭ける。
EMS(Electrical Muscle Stimulation)とは、電気の刺激で筋肉を鍛えるマシーンの総称である。
店頭でもよく見かける腹筋用のベルトタイプを始め、今ではあちらこちらに氾濫している商品群は、もともとこの商品、『ツインビート』から始まったのだ。
『ツインビート』は、電気の力で運動と同様に筋肉を鍛え体脂肪を燃焼させることができる運動器。今やプロ・スポーツ選手の筋力アップやシェイプアップにも利用されている。さらにこの商品の強みは業務用のノウハウを駆使して開発されたもので、つまりは家庭用では最高クラスの高機能本格派EMSなのである。
商品はもちろん、商品をつくるメーカーが、国内でトップクラスのEMSノウハウをもった会社だった事も、この商品を信頼した理由だった。臨床テストを繰り返し、商品を練り上げ、満を持しての市場への投入。一見高すぎるのではと思われる148,000円という価格設定も、決して利益優先ではなく、良質な商品提供を維持する為だ。
2001年2月、始めてこの商品が紹介されたのは午前11時過ぎの時間帯。初回の放映から、なんと1億円を超える売上げを達成。その後の放映では、会社創立以来、最高売上となる7億円を記録する。
1回の放映で1億円の売上げでさえ、極めて“まれ”なことであり、年に何度もない事なのだから、これはかなりの数字である。ある程度の反響は予測していたが、ここまでとは思っていなかった。思いのほか、男性からの購入が多かったのもうれしい誤算だった。
「売る側の理屈では、絶対商品は売れません」と、勝又は言う。
「EMSとはなんぞや、なんていう難解な理論の説明はお客様にはどうでもいいこと。“この商品は、あなたにとって、こんな風に役立ちますよ”というのを、お客様にわかるように伝えることができなければダメなのです」
インパクトのある映像によって、欲しい情報が即わかる事、瞬間的にイメージできる事がテレビで売れる商品の条件。その意味では、“電気的刺激”という映像では簡単には見せることができない商品、それでいて決して安くない価格設定、社内ではこの商品の販売を疑問視する声もあった。
それらの課題を、ひとつひとつ乗り越えていく。
モニターには実名で顔を出して登場いただき、結果をリアルなコメントで伝える。CTスキャンを使って、使用前後の体脂肪の変化を「見せる」。超音波エコーでEMSの電気刺激で実際に筋肉が収縮している様子を「見せる」など。商品の魅力を「見せる」表現方法も、勝又の考えに基づいて、放映までに練られていった。高すぎると思われる価格設定についても、きちんとターゲット層にヒアリングし、データを取って検証を行い、エステやフィットネス・クラブなどに通う手間と効果、そして価格を考えれば、決して高い値段ではないという自分なりの確信も得て、値引きでアピールするのではなく、商品の良さで押す決断をする。そして何より、一人の消費者としてメーカーに対して徹底的に質問を繰り返し、それをまとめていった。
取材を通じて、私たちは勝又からたっぷりとこのヒット商品の強みを聞くことができた。彼女の説明を通じて、最終的に7分間という限られた時間での勝負に打って出るまで、いかに勝又が徹底して消費者の目で、この商品の品定めをしてきたかがよくわかった。そこからは自分の成功談や苦労話よりも、商品への深い理解と愛情と商品を伝える立場からのお客様への責任感が伝わってくる。
“テレビ通販で売れる商品”について、勝又に尋ねてみた。
「売れる商品は他との差別化ができるものですが、要は自分が独りよがりに欲しいモノではなく、“お客様の”欲しいモノですね。」
この言葉に勝又のヒット法則のすべてが集約されている。いくらなら、どんなものなら、どんな機能があればお客様に満足してもらえるのか、自分だったらどうだろう、お客様はどう感じるだろう、そんな問いを繰り返して、それに対する答えを見い出していく。近道を探すより全部の道を歩いてみる、そんなアプローチをひたむきに実直にこなしていく勝又なら、今後もまた新しい市場を拓いていくことだろう。
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