“1分で効く”という商品宣伝キャッチの火付け役
開脚エクササイズを世に広め一般的な運動にした 大ヒット商品『内転筋エクササイザー』

その日、児玉は台湾に居た。商品MDはヒット商品の種を探してアンテナを張り巡らせ日々情報を吸収している。健康マシンを担当する児玉も、「何かないか」という気持ちを胸に台湾で開催された商品展示会に足を運んでいたのである。そこで衝撃的な出会いが待っていた。

児玉智彦商品を検討する際、児玉が最初に行うのは、まず自ら試してみることだ。ある展示品を試し終えたとき「いろいろな運動器具を試した中で、こんなに短時間で効くものは初めて」と感じたという。脚を開いたり閉じたりするときに筋肉に負荷がかかり効果があるというもので、「腕立て伏せが腕に効果があるように動きも単純明快でわかりやすく、効き目を実感できる。これはいけるかもしれない」という満足感を得た。児玉はヒット商品の予感を土産に帰国の途についた。

帰国後、児玉は早速商品化に向けて動き出す。メーカーと打ち合わせを重ね試作品作りに力を入れた。商品化の際、児玉が何よりもこだわったのは安全面である。どの分野の商品でも安全性は重要だが、健康マシンは、使った人がケガをしないための細心の配慮が不可欠だ。これは開脚運動を行うマシンなので、当然のことながら開脚状態と閉脚状態になる。人は開脚では問題ないが、閉脚のときは平衡バランスが悪い。ましてやそこからいきなり脚が開けば転倒する可能性が高い。児玉はこのことを台湾で試したときから感じていた。児玉の提案で、足を乗せる板は常に開脚状態でストップするようにして、閉脚では乗れないように修正した。これによって転倒というリスクを回避した。

また、児玉はネーミングにもこだわった。普段の運動では鍛えにくいとされる、太ももの内側にある内転筋。今までもこの内転筋は重要な筋肉だという認知はあったのだが、運動器具に目を向けるとアスリート向けのもの中心で、一般の人が気軽に使って鍛えられるものはなかった。だから内転筋という言葉は必ず入れると決めていた。内転筋を入れた耳に残る響きのある名前…。児玉は考えた末『内転筋エクササイザー』と名付けた。「なんか戦隊ヒーローものみたいでなんとなく耳に残るでしょ」と児玉は笑った。名前も決まり、後はいかに番組で紹介していくかを考えるだけであった。

まずはモニターに試してもらい、スポーツインストラクター、大学の研究機関と協力して筋電図などの裏づけとなるデータを取った。筋電図の波形を見て児玉だけでなく、その場に居た全員が目を疑った。普通の歩行のときとは比較にならないほどの波形が出ていたのである。データ的にも効果は充分すぎるほど証明された。また、モニターには1分間を3セットという条件で試してもらったが、テストを始めた当初は、想像以上の負荷のためか、1分間きちんと運動を継続できた人は一人もいなかった。このとき児玉の頭の中には“1分で効く!”というキャッチが生まれていた。

番組放映に向けて最終のツメ段階に入った頃、社内では「“1分で効く!”というのは問題ないのか。1分という表現は止めたほうが安全なのでは」などの意見もあった。しかし、児玉は先の裏づけデータと、試せば絶対にわかるという自信のもと、少しもブレることはなかった。そして、番組はオンエアされた。結果はと言うと、初回放送で7000万円の売上を記録した。売れ筋とされるラインと比較しても反響の大きさがわかる。『内転筋エクササイザー』はこの後も売れ続け、1回の放送で売上1億円超えを記録するほどの大ヒット商品となった。

『内転筋エクササイザー』が起こした反響は商品の売上だけではない。それまでなかった「開脚エクササイズ」という新しい運動スタイルをブレイクさせるキッカケを作ったのである。また、表現上、どうしても慎重にならざるを得なかった「1分で効く!」というキャッチ。これも今ではいろいろなところで使われているが、火付け役は『内転筋エクササイザー』だ。従来の健康マシンのマーケットを大きく変える大きな波を起こしたと言っても決して過言ではないのである。

これほどの波を起こした本人である児玉は「きっかけは確かに自分が作ったという自負がありますが、私だけの力ではなく盛り上げていったのはディノス全体です」ととても謙虚だ。確かに一度売れた商品は、他の番組でも取り上げられるし、カタログでも大きく扱われることは確かだ。それにしても、マーケットを変えるほどのブームを起こしたのに浮かれたところが全くない。それが児玉の、そしてディノスの魅力であり強みなのだ。この強みが次のブームを起こす日も遠くはないだろう。

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